政府の秘密指定・保護制度の全貌を調査しました

 2014年12月10日に特定秘密保護法の施行が予定されています。秘密の保護は、法律によるかよらないかを別にして、およそ組織が存在すると生まれるものです。

 特定秘密保護法は、すでに政府の中に多く蓄積されている「秘密」を持つ構造の中に埋め込まれる新たな枠組みです。特定秘密保護法だけを見ていても、実際に何がどのように枠組みとして変わっていくのか、ということを理解することは困難です。情報公開クリアリングハウスでは、特定秘密保護法によって何がどう変わっていくのかをウォッチするため、政府が持つ法律によらない秘密指定の仕組みを全行政機関対象に調査をしてきました。

 その結果をこのたび以下の通り取りまとめました。

  リリース 政府の秘密指定・保護制度の全貌が明らかに(2014/11/7)

 今回の調査で分かったことは、38機関で秘密指定関する規程・訓令・規則などが95種類あることが確認できました。

 秘密指定の種類は、以下のようなものがあります。

  特別管理秘密(衛星秘密(機密・極秘・秘)を含む)
  秘密文書(機密・極秘・秘)→TPP秘密関連文書を含む
  法律に基づく秘密指定(防衛秘密、特別防衛秘密)
  防衛省秘(防衛秘密、特別防衛秘密以外のもの)
  秘密軍事情報(米・英・仏・豪・NATO)

 これらとは別に、情報セキュリティの観点から機密性の格付けが行われ、機密性3情報、2情報、1情報の区分があります。

 上記のうち、特別管理秘密については行政機関ごとの指定件数、廃棄の状況が把握されていますが、秘密文書については指定件数・廃棄件数・解除件数が把握されておらず、これらの件数の情報公開請求をしたところ不存在となりました。
秘密文書が最も広範に行政内部で使われている秘密指定でありますが、これについては実態が把握できていないことがわかりました。

 今回の調査では、いくつか新たに分かったことがあります。以下が、今回、主に分かったことです。

  1. これまで特別管理秘密、秘密文書に関するルールを有していないものの、特定秘密の指定権限を持つことになるのは、国家公安委員会と公安審査委員会であること
  2. 特別管理秘密は29機関で指定ルールを持っていますが、このうち15機関は保存期間満了後には廃棄するものの、国立公文書館に移管するものを除くと明記され、かつ移管の際には秘密指定を解除されていることを確認すると定めています。これに対し、14機関では単に保存期間満了後に廃棄とのみ規定をしており、違いがあることがわかりました。
  3. 特定秘密でも議論になった緊急時の例外的な廃棄は、内部ルールでは衛星秘密と防衛省秘で確認できました。公文書管理法は、廃棄に当たっては内閣総理大臣の同意を得ること、法令やそれに基づく命令がある場合は、公文書管理法の管理の例外として扱うことができると定めています。そのため、緊急廃棄も法令に基づくものであれば、公文書管理法の例外として可能ですが、衛星秘密も防衛省秘も法令に基づく仕組みではありません。脱法的に廃棄についての例外ルールを定めていたということができます。
  4. 秘密文書については、秘密の指定も解除、指定期間の設定も非常に緩いルールになっていることがわかりました。指定期間については、指定時に設定することを義務付けているルールを定める一方で、無期限の期間設定も認めている場合もあり、秘密指定から情報公開につなげていく仕組みは明らかに欠如しています

 複数の秘密指定の仕組みが並立をしています。また、特別管理秘密は、特定秘密保護法の施行に伴い廃止される見込みですが、すべてが特定秘密にはならないとされており、法の施行までに特定秘密以外の秘密指定の仕組みについて統一的な基準を策定するため、政府内で検討がされています。

 今回、実態として政府の秘密指定制度の状況が把握できましたので、今後、どのように政府の持つ秘密が移行し、管理され、情報公開される仕組みとなるのか、引き続き注視をして行くとともに、情報公開を進めるための提案を行っていきたいと考えています。

 なお、調査を経て、少なくとも現段階で検討すべき、あるいは注意をすべき点としては以下のことが言えます。引き続き、実体を踏まえて提案や政策動向の監視をしていきます。

  1. 秘密文書を最小限のものにするための、秘密指定・指定期間・解除と、これらの運用状況を把握するための仕組みについては、特定秘密保護法程度のものを入れるべきであり、その運用状況を公表する仕組みとすべきである
  2. 秘密指定解除の手順・仕組みの明確化、機密指定期間の設定の義務化。指定期間の満了による自動解除、無期限の機密指定の禁止は最低条件である
  3. 秘密指定の要件は、複数の仕組みから裁量的に選択し得るようなものとせず、統一的なものとし、特に機密性3情報のような秘密文書と関連する格付けは、秘密指定がされていることを条件とするべきである
  4. 行政文書ファイル等に秘密文書が含まれているか否かを、「行政文書ファイル管理簿」に記録する仕組みとすべきである(特定秘密でも同様の対応が必要)。例えば、新たに記載欄を追加し、「特定秘密」「その他の秘密指定の区分」「要審査」「公開」など、政府のアカウンタビリティとの関係で情報をどう取り扱うかの区分を示しておくべきである
  5. 行政文書の廃棄審査に当たっては、行政文書ファイル管理簿ベースで審査が行われている現状が変わらないのであれば、ファイル管理簿に記載した「特定秘密」「その他の秘密指定の区分」「要審査」については重点的に審査を行うような仕組みとすべきである
  6. 秘密文書については、秘の指定をしたまま国立公文書館等に歴史文書として移管ができるように規定を整備すべきである
  7. 取扱注意文書など、秘密指定以外の形での情報の取扱い制限については禁止をすべきである

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